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Q24
将来キャッシュ・フローとして、その期待値を見積った場合、リスクはすでにキャッシュ・フローに反映されていると考えられるので、さらに、割引率又はキャッシュ・フローに反映させなくてもよいのではないでしょうか。
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A
期待値を将来キャッシュ・フローとしたからといって、リスクがキャッシュ・フローに反映されているとはいえません。
例を挙げて考えてみます。
1年後のキャッシュ・フローが、(1)100となる確率が100%である資産(例えば、国債)、(2)80となる確率が50%、120となる確率が50%である資産、(3)0となる確率が50%、200となる確率が50%である資産は、いずれも、1年後のキャッシュ・フローの期待値は、100となりますが、将来キャッシュ・フローがその見積値(この場合、期待値)から乖離するリスクは、全く異なります。リスク回避的な市場であれば、リスクを考慮して、(3)に最も高い収益率(割引率)を要求するはずです。
このように、期待値を将来キャッシュ・フローの見積りとした場合であっても、実際のキャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクを、割引率とキャッシュ・フローのいずれかに反映させる必要があります。
ただし、割引率又はキャッシュ・フローにリスクを反映させるためには、資産によっては、何らかの資産評価モデルを用いて、リスクを織り込んだ割引率の決定や、キャッシュ・フローに対するリスク調整を行わなければなりません。このような調整を行うことによって、かえって、恣意的な結果がもたらされる場合があるとする見解もあります。このような考え方に立つと、キャッシュ・フローの見積りには、理論的に優れているとされる期待値を採用したうえで、場合によっては、無理にリスクに関する調整を行うべきではないということになります。
いずれにしても、割引率は、減損会計を実際に適用するうえで重要な項目ですので、今後、企業会計基準委員会において、理論と実務の両面から十分な検討がなされるものと期待されます。
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