「固定資産の減損に係る会計基準」Q&A


 
3.基本的考え方
Q4
 固定資産の減損処理は、金融商品に適用されている時価評価とはどのような点で異なっているのでしょうか。基本的な考え方を教えてください。




 金融資産の時価評価は、(1)資産価値の変動によって利益を測定することや、(2)決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的としています。例えば、売買目的有価証券やデリバティブの時価評価は、(1)と(2)の両方を目的とし、その他有価証券の時価評価は(2)を目的としているといえます。
 一方、固定資産の減損会計は、あくまで取得原価基準の下で行われる会計処理であると位置付けられています。
 すなわち、事業用固定資産については、取得原価から減価償却等を控除した金額で評価されますが、その収益性が当初の予想よりも低下した場合には、回収可能性を帳簿価額に反映させる会計処理が必要となります。これが減損会計であり、棚卸資産の評価減や固定資産の臨時損失・臨時償却などの伝統的な会計処理と同様に、資産の過大な帳簿価額を臨時的に減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理です。
 このような考え方は、意見書に独特のものではなく、米国基準や国際会計基準における減損処理も、基本的には取得原価基準の枠内の処理であるとされています。たしかに、減損処理を行った時点では、資産の帳簿価額は、時価(米国基準の場合)や回収可能価額(国際会計基準の場合)といった現在の価値を反映した金額になりますが、いずれの基準でも、その後の年度においては、減損処理後の帳簿価額に基づいた規則正しい減価償却を行うことが求められています。帳簿価額を時価や回収可能価額にすること自体が目的ではなく、将来の年度に損失を繰り延べないための処理であると理解することができます。
 なお、後述する投資不動産については、国際会計基準や英国基準において、時価評価による会計処理が定められています(ただし、国際会計基準においては原価基準との選択適用)。これらの基準では、毎期末、資産の帳簿価額を時価に評価替えしますが、減価償却や減損処理は行わないこととされています。むしろ、金融商品の時価評価に近い会計処理であり、減損処理とは全く別の考え方に基づいているため、意見書においても、切り離して議論されています。





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