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(1)概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位
事業用の固定資産については、種類の異なる複数の資産が一体となって使用され、キャッシュ・フローを生み出している場合がほとんどである。例えば、工場の製造設備を考えてみると、ある1台の機械だけでキャッシュ・フローを生み出すということは、まず、ないといってよいだろう。その機械と関連する他の機械設備、作業に用いられる工具・備品、それら全体を格納する工場建物等といっしょになって生産活動に貢献し、キャッシュ・フローを生み出すのである。したがって、減損会計においては、複数の資産をまとめる単位を設定して、会計処理を行わざるを得ない。
しかし、この単位をあまり大きくすると、回収可能価額の不足と超過が相殺され、減損損失の金額が、正しい金額より小さくなってしまう恐れがある。そこで、意見書では、減損損失を認識するかどうかの判定と減損損失の測定において行われる資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行うこととし、そのような単位を「資産グループ」と呼んでいる。
意見書前文にも書かれているとおり、実務的には、資産のグルーピングに関するこのような原則的な考え方を踏まえつつ、管理会計上の区分や投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位等を考慮して、グルーピングの方法を定めることになると考えられる。
(2)減損損失の配分
資産グループについて認識された減損損失は、その資産グループの各構成資産に配分する必要がある。意見書は、減損損失の配分は、合理的な方法によって行うとし、帳簿価額に基づく比例配分を合理的な方法の例としている。また、各構成資産の時価を考慮した配分等他の方法が合理的であると認められる場合には、当該方法によることもできるとしている。
(3)共用資産の取扱い
意見書は、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産(のれんを除く)を、共用資産として、その取扱いを定めている。国際会計基準では同様の資産を「全社資産」と呼んでいるが、本社部門の建物のような企業全体に関連する資産だけでなく、一部の部門にのみ関連する資産も含んだ概念であるため、意見書では「共用資産」としている。
共用資産については、短期に処分する予定である場合などを除き、回収可能価額(特に使用価値)を単独で算定することはできない。そこで、共用資産がキャッシュ・フローの生成に寄与している他の資産又は資産グループとの関係において、どのような単位で資産のグルーピングを行うかということが重要となる。
共用資産に係る資産のグルーピングについては、共用資産が関連する資産又は資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位でグルーピングを行い、その大きな単位で減損損失の認識と測定を行う方法と、共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分し、共用資産を配分後の各資産又は資産グループについて減損損失の認識と測定を行う方法が考えられる。
意見書は、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で各資産グループに配分することが、一般に困難であることを理由として、前者の方法(より大きな単位でグルーピングする方法)を原則としている。
しかし、共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する資産又は資産グループに、合理的な基準で配分することができる場合には、後者の方法(共用資産の帳簿価額を配分する方法)を採用することもできるとされている。
(4)のれんの取扱い
のれんは、企業買収の対価から、買収によって取得したのれん以外の正味資産の時価を控除した差額として認識される資産であり、単独では、回収可能価額を算定できない資産である。このため、のれんについても、共用資産と同様に、どのようなグルーピング単位で減損処理を行うかが重要となる。
意見書は、のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数である場合には、まず、のれんの帳簿価額を合理的な基準に基づき分割するとしている。これは、企業買収などにおいて、複数の事業が取得される場合に、そこで生じたのれんを一括して減損処理することは、減損処理の単位としては大きすぎるからである。
分割されたそれぞれののれんについては、共用資産と同様に取り扱われる。すなわち、のれんが帰属する事業に関連する資産グループにのれんを加えた、より大きな単位でグルーピングを行うことを原則とし、のれんの帳簿価額を関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合は、配分することもできるとしている。
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