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減損損失をもれなく計上するためには、本来、減損会計の対象となっているすべての資産について、毎期、その回収可能性を検討し、減損損失を認識するかどうかの判定を行うべきであろう。しかし、対象資産すべてについて、このような作業を行うことは、実務上、過大な負担となるおそれがある。また、企業の保有する固定資産のうち、減損が生じている資産(具体的には、後述する減損損失認識の判定基準に抵触する資産)は、通常、ごく一部であり、そのような資産を重点的に調査できるような識別基準を設けておいた方が、効率的に減損処理を行うことができる。
このような考え方から、意見書では、資産又は資産グループ(資産グループについては後述)に減損が生じている可能性を示す事象がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定を行うこととし、そのような事象のことを「減損の兆候」と呼んでいる。いいかえると、企業は、その保有資産の中から、減損の兆候がある資産を識別し、識別された資産についてのみ、後述する減損損失認識の判定を行うことになる。
意見書では、減損の兆候として、以下の4つの事象が掲げられている。
1)資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが、継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること
2)資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること
3)資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること
4)資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと
これらは、減損の兆候の例示であるとされている。したがって、これらの事象以外でも、資産に減損が生じている可能性を示す事象があれば、減損損失認識の判定を行う必要がある。
2番目の、「使用されている範囲又は方法」に関する兆候としては、さらに具体的に、
・資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること
・当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを処分すること
・資産又は資産グループを当初の予定と異なる用途に転用すること
・資産又は資産グループが遊休状態になったこと
が挙げられている。
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